長文になると英語が読めなくなるのはどうして?

最終更新:2020年4月30日
英語って、

 ①得意
 ②長文になると苦手
 ③苦手

のどれかに分かれるので、「普通」がない特殊な科目です。
特に②の、平均点+α(あるふぁ)くらいは取れるけど、なんか苦手っていう人は多いんじゃないかな。

このページではその「②長文になると苦手」というのがどういうことか、ということについて考えていこうと思います。
みんな言うでしょ、長文になると読めなくなるって。
きっと、そうかー!と思えるよ!

元々、冬期講習あたりの時期に、先生仲間に配る文章として書いたものを中学生用に書き直しました。
でも、大学受験生や英語をやり直したい大人にも使える文章です。
じっくり進めていくので、読み物としてダラダラ読んでね。


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■イントロダクション(導入)

「勉強した時間」に対して、理解度は

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こんなふうに上がっていきそうですが、実は違います。
こうです。

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数学は、関数だけ勉強しても基礎計算が苦手ではなかなか伸びません。歴史は、江戸時代だけを学ぶより、前後の時代との関係を知っているほうが江戸時代を理解していると言えるはずです。
勉強は、最初は知識が断片的(だんぺんてき:バラバラのパズルみたいな感じ)なので、伸びるまでに時間がかかるんです。
ただ、ある程度のところまで行くと、それらが繋がって理解が一気に進む時期があります。そこまで我慢できるかどうかが、まずは大切なことなんだよね。

(本当は、いったん上がると、また伸び悩みの時期が来たりするけどね)

中でも特に時間がかかるのが英語です。
上の数学と歴史の例でも、実際はある程度の点は取れるかもしれません。でも英語は違う。
助動詞だけ勉強しても英語は読めるようにならない。過去形だけを勉強しても、受動態だけを勉強しても、不定詞だけを勉強しても英語の得点は取れません。他の科目よりも明らかに土台の量が多いからです。

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だから英語は、受験直前の時期には一番伸びにくい科目だとも言えます。
すごく苦手な場合、おそらく土台作りをする前に受験が来てしまうし、これだけ覚えとけばここだけは取れる、という箇所もないからです。

でも英語は、2学期の期末試験までは主に文法対策しか塾で行われません。大体の塾、大体の先生が「本当は長文もやりたい」と思いつつ、結局文法だけで時間がいっぱいになってしまうのが実状です。
なのに、2学期の試験が終わった途端、急に長文対策がメインになります。
だから戸惑う。そして戸惑うのは、実は生徒だけじゃないんです。

先生側も、長文指導をほとんどやったことがないから、とりあえずテキストを使って長文対策をしていくことになります。
だけど慣れない長文指導。
一題一題にかかる時間の長さ、フルでやろうとすると時間のかかりすぎる解説の取捨選択、「ここにヒントがあったね」「ああそうか」だけで終わってしまう解説。
先生自身がどうやって長文対策をしていけばいいのか迷っているというのが、言えない本音です。

例えば数学なら、○と×が理解度の明確なバロメータとして使えます。
また、×だってこういうことが出来るようになれば○になるだろう、という道筋もある程度は明確です。
しかし英語の○と×は違います。
読めていたはずなのに解けない。読めてないはずなのに解けてる。こういうことが頻繁に起こります。
解けてない、読めてない場合、膨大な土台のどの部分を埋めるべきなのかが分からない。
決まりとして文法問題を毎回出せと言われてるから宿題で出してる。そんなもんです。

2ヵ月もしたら受験対策は終わり、また文法メインの授業になります。
だから特に指導技術が伸びないまま、次の冬も同じような感じになる。

だからみんなは、方法論の確立してない長文指導を受けているということ。
長文が苦手な生徒と、長文を教えるのが(実は)苦手な先生。
そりゃあそうなるよね、という感じです。
だから長文対策として、たぶん先生は「とにかく単語」か「苦手な文法」を宿題で出すことが多いと思う。

だけど、野球は素振りとキャッチボールだけでうまくなるのかな。
だけど、音楽は音階練習だけでうまくなるのかな。

英語は確かに伸びにくいです。
でも、冬に出来ることは本当に単語と文法しかないのかな。「長文読解」としての対策って、ないのかな。
いくつか実践してうまくいったことを中心に紹介していくよ。

大きく分けると

 ●わからなくても読み進めるにはどうするか
 ●わかるのに生じる誤読をどう避けるか

の2テーマです。

中学生でも無理なく使える程度の、しかも正統派の技術を紹介していきます。
英語長文をやり直したい人にはきっとみんなに役立つはず。
最初は基礎的な技術からいきましょう。


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■下線部が来てもすぐに解答しない

国語もそうだけど、下線部の答えがその後にくることもあります。
下線部が来てからすぐに回答しても、わからない可能性があるということ。
その答えが文章の終わりにくることだってある。

だから「本当は最後まで読んでから解答したい」という気持ちがあります。
「気持ち」というのはどういうことかと言うと、それが実際には不向きなことも多いからです。
時間がなくなったり、前半と中盤と後半とがゴチャゴチャになってしまったりするからです。

(高校入試程度の問題なら、下線部の答えが相当離れて存在すること自体あまりない、というのも隠れた理由のひとつです)

だからせめて、「区切りまでは読んでから問題を見る」ようにしましょう。
具体的には「対話文は話題が変わったら」「長文は段落ごと」。
指示語問題(itが何を指すか)や文法問題(並び替えなど)はその場でもいいっちゃいいです。

長文の場合は、まず段落まで読む。
そしたら問題を見てみて、解けるものがあったら解く。
解けそうなも気もするけどまだ読んでいなそうな内容があるなら保留にする
解けるものがなかったら、当然文章に戻って次の段落まで読み、またその繰り返し。
対話文には段落がないけど、ヒロシの話してたのに「タケルはどう?」みたいになったら、ヒロシ関連の問題は解けるので解く。
これが基本になるはずです。


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■ちゃんと読む

当たり前でしょ?と感じると思いますが、まあまあ。
読んでみてください。

単純な文法問題とは異なり、長文になると

 ●問題を読んでから、似たような単語の箇所を探してつまみ読み
 ●長文をなんとなく行ったり来たりして、ぐるぐると読む

ということがかなり高い確率で起こっています。そこの君だ!!

長い英語の文章を読むことに慣れていないからだと思います。
しかも苦手な生徒だけではありません。60点前後取っているような生徒も同様です。
(そのような読み方をしているからその程度で停滞しているとも言えます)
実際、僕自身も中学生の頃はその両方の読み方をしていたと記憶しています。

ただ、そんな読み方では文章の内容が頭に入るわけがない。
みんなが取れる問題は取れても、みんなが落とす問題で落とすということ。
差がつかないということは、入試、試験の場合どうなるかわかるよね。

だけど、その方法がダメだと思ってやってるわけじゃない。
なんとなくやったらそうなっただけです。
それは、ちゃんと読むということを知らないから。
ちゃんと読むというのは、「正攻法」で読むということです。

正攻法とは、当たり前だけど「文章をはじめからきちんと読む」ということです。
当たり前だけどね。

でもその当たり前のことを言わなくちゃいけないほど、上記2パターンは本当に多い。
読めるはずなのに「最後めんどくさくなっちゃった」とその辺りの問題だけ落とした生徒もいました。

上で「区切りまで読む」と書いたけど、区切りまでどころか「きちんと」「始めから順番に」読むことが出来ている生徒が少ないんです。
最初からちゃんと読もうと言うと、大体の生徒がはじめ少し驚いて、そして「めんどくさい」と言います。
でも勘のいい生徒ならこの方が楽だと数回もすれば気付くんです。

なぜなら「問題を読んでからつまみ読み」や「行ったり来たりのぐるぐる読み」をしてしまう生徒は、結局何度も同じ文を読むことになり、かつ前後関係がわからないせいで内容が頭に入ってこないからです。

「楽しくて」「うるさくしてたら」「怒られて」「悲しかった」という流れの文章があるとします。
そのまま読めば感情の流れは素直に見えてくるはずです。
だけど行ったり来たりして読むと前後関係が分からなくなって、例えば「なぜ怒られたのか」が分からなくなって、適当に解釈して、結果全体がゴチャゴチャになります。
「楽しかった」「怒ってうるさくした」「悲しまれた」のように、なぜ楽しさの後に怒りが来たのかを見失い、「誰が」という主体も見失います。
日本語ではまずありえなそうな例。
だけど、こういうことは英文読解だと平気で起こります。

さらに。
上述(じょうじゅつ:上に書いたこと)の「区切りまでは読む」ということをしない場合、問題にいくと話が途中で途切れてしまいます。
だから文章に戻ったときに「少し前から」読まなくちゃいけなくなる。
そうすることでスピードも理解も必ず遅くなります。
(なぜ理解も落ちるのか、考えてみてください)

 ①文章をはじめからきちんと読む
 ②区切りまで読んでから問題を見る

一見面倒くさく、難しく思えるこのやり方は、ストレートに読んでいるために理解もスピードも上がって、かなり読み易くなるはずです。
実際その取り組みだけで、過去問の解き直しでまあまあ出来ていた生徒が12点以上アップ(しかも1問ミス程度)しています。
とってもたいせつなことだよ。

また、なぜぐるぐると読んでしまうのか、の理由に関しては後述(こうじゅつ:後で言うこと)します。


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■分からない単語はカタカナにして読み進める

ここからはもっと実践的な技術です。
例えば都立入試問題H26の対話文に「Peter talked to a clerk.」という文が出てきます。

このclerkという単語の意味が分からない、しかも読めない、そんな人も多いんじゃないかな。
こういうふうに読めない単語が出てくると、その英文「全てを諦めて」理解度0のままで次の文に行く生徒が多いです。
すごく多い。

でもそうすると、1文まるまる飛ばしてるわけだから当然、前後関係が分からなくなります。
しかも以降の文にもclerkが出てくるはずなので、その辺一帯の文章全てが読めなくなる。
分かる単語「のみ」の文を探すと、当然文章の流れもわからなくなります。
(これはぐるぐる読みの原因の1つです)

ただ、そのような生徒はたくさんいるのに、先生側も「これは○○という意味だよ」というだけの解説で終わってる場合が多い。
でも本当に、その単語を知らないと読めなかったんでしょうか。
その教え方、その考え方では、知らない単語が出てきた時点で、アウトということにならないかな。

単語はもちろんたくさん覚えてるほうがいいです。
知らない単語も文法もない方がいい。当たり前です。
でも、わからない単語は必ず出てくるよね。
それならわからない単語に対して「残念だったね次は覚えておこうね」しか言わないのはナンセンスです。

読めない単語が少しくらい出てきたって、読み進める力をつけようとするべきなんです。
じゃあどうすればいいんだろう。

「クラーク」というカタカナ読みのままで読み進めればいいんです。
理解度0のままで次の文に行くんじゃなくて、「ピーターはクラークに話しかけた」まででいいから訳せれば、内容はグッと掴み易くなります。

clerkを「クレルク」と読んじゃったって別にいい。
人の名前と思ったっていい。
とにかく「0にしない」ということが大切です。

ピーターはクレルクに話しかけたんだなと思いながら読んでると、
クレルクが別の色のTシャツを持ってくれたりします。
あれ、クレルクって洋服屋の店員かなって分かってくる。
clerk(クラーク)は「店員」という意味です。

入試レベルの全ての英文を完璧に訳せるわけない。
だからって「1」か「0」の読解では必ず誤読が生じます。
読めなくたって、「0.4」でだって、最低限読み進められる力、読み進もうとする根気が必要です。
その0.4が、「信頼できる0.4」だから。

意味を教えるだけじゃなくて、困った時にどうするかを教えてくれる先生はいい先生です。


■分からない単語は「+」か「-」かで判断する

上の続きです。
例えば「This book is difficult.」の「difficult」が分からないなら「この本はディフィカルトだ」までは訳せるようにしよう、というのが上述の内容でした。
この文が「This book was difficult, but you can read it.」と続くとしたら「この本はディフィカルトだ、けど君は読めるよ」となります。

「君は読める」という内容は「+」です。
「but」は「だけど」という意味だから、その前には「-」が来るはず。
「-だけど+」にしないと変だよね。
(「+だけど+」だと変)

だから「ディフィカルト」はマイナスの単語だろう、というのはわかるわけです。
単語がわからなくても、この作業をするだけで文章はなんとか読み進めていけます。
ちょっとした国語力も必要だけどね。 

「分からない単語はカタカナにしてとりあえず訳す、かつ、プラスかマイナスかを判断する」
この2つのアプローチが、分からない単語が出てきたときに可能な、有効なアプローチです。
(前述のclerkは「+」「-」の判断をしても仕方ない、というのは気づけたらいいんだけどな)

都立入試問題H26の過去問の他のところに

 She smiled and answered ”Oh, thank you.”

という文が出てきます。
「smiled」を「スミレ」と読む人続出。
でもそれでいい。
「彼女はスミレしてありがとうと答えた」んだなって思えばいいんです。
そのとき、「スミレ」は「+」「-」どっちの単語だと思う?

「and」は似たようなものを繋ぎます。
ありがとうと答えるが「+」だから、「スミレ」も「+」。

とにかくプラスの感情だったんだなって思えば、別に読んでいけます。
(ちなみにスミレは「スマイル」でした。プラスの代表格。)


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■下線部は考えてから選択肢に

これも正答率のかなり上がる、かつ身に付けやすいテクニックです。

下線部が来てもすぐに問題を見ない、というのは前述の通り。
だけどちゃんと区切りまで読んだのに解けなかった、ということがよく起こります。
なぜならそれは、問題を何も考えないで読んでしまうから。
微妙にしかわかっていない状態で4つの選択肢を読むと、どれも正しく感じてしまうんです。

 A. なんちゃらこうちゃら
 B. I know.

という下線部があるとします。
そのとき、区切りまで読んだとしても、すぐに問題を見ない。

I know.の下線部が来たら「Bは何を知っているのかな」と考えるんです。
それから選択肢を見る。これだけ。
これだけで相当楽になります。
消去法がかなり有効になるからです。

このI know.は、ある長文テキストの対話文にあった下線部でした。
高校卒業後に海外へ行く、両親も理解して援助してくれる。
そういう英文の後の会話で「両親に感謝しなきゃいけないね」「I know.」と続いていたわけです。

もちろん私は「両親に感謝しなきゃいけないこと」を分かっている(知っている)わけです。
ならば選択肢には「両親」とか「感謝」とかの単語が全くないのは「かなり変」だよね。
以下、実際の選択肢です(ざっくりと日本語訳にしてあります)。

 1. 両親は私に大学に行ってほしい~
 2. 両親は私を心配しているが何も言わない
 3. 私は海外で多くのことを経験すべきだ~
 4. 私は両親に感謝すべきだなぜなら~

比較的「両親」という単語が多めの選択肢です。
それでも3の「両親」がない選択肢はその時点で(ちゃんと読むべきだけど)かなり可能性が低いだろうと分かります。

それ以外は「両親」を含む他の選択肢です。
1は「大学に行け」とは言っていないから不正解っぽい。
2は心配してるとは書いてないけど、なんとなくそれらしい気もする(かもしれない)。

でも明らかに4が正解だよね。
「両親」とともに「感謝」もなければ「かなり変」だったんだから。

ね。めちゃいいでしょ。
この方法が身に付けば、「英文は読めているのに問題が解けない(点が取れない)」というあの長文あるあるが激減するはずです。


また都立入試問題H26の過去問を見てみようか。

 ヨシエ「おばあさんが笑ってありがとうと答えた。そして私がカバンを持ってあげてそのあと一緒に駅の前まで行った(ざっくり訳)」
 ピーター「That's a good story!」

このピーターの言葉の内容を表しているものを選ばせる問題です。
もちろんピーターは、ヨシエの「この行動」について「いい!」と言っているわけです。
選択肢を見てみましょう。

 1. リュータは → かなり変
 2. マイコはレストランに → かなり変
 3. ヨシエはお年寄りの女性を手助けして〜
 4. レストランで待っていた少年は → かなり変

明らかに3しか答えがありません。
(これ都立の実際の問題だよ!)

仮に3の英文が難しくて完璧には読めなくても「それ以外が明らかに違う」んだから選ぶしかない。
ちなみに1はヨシエより前の話題(しかも間違えてる)、2と4はその後の話題です。

どういうことかわかる?
問題から見て文章の該当箇所を探したり、正攻法で読まずにぐるぐると読むと・・・。
そのやり方での「誤答」を誘発しているわけです。
でも正攻法で、かつ、下線部の内容を考えてから解けば余裕。余裕すぎる。

これだけで4点。
48点が52点になるんです。


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■困ったときほど「左から右へ」

この内容は中学生だと難しいと感じるかもしれません。
でも僕はほとんどの生徒に授業で伝えていました。
これができれば誤読が圧倒的に減るからです。

この章は、ざっくり言うと「日本語訳について」です。

日本語訳は学校でも塾でもよく書かせられたよね。
なのに誤読が多い。長文になると特に多い。
訳なら今まで散々やってきたはずなのに。どうしてなんだろう。

知っている文法と単語だけで構成されている英文なのに、訳させたら全然違う訳だった。
そういうことを教えながら数多く経験しました。

それに気付いてから、元の予定を少し遅らせてでも、その文章の全ての英文を1行ずつ音読と訳を言わせてみたんです。
どの程度まで理解しているかを確認するためにね。
そしたらまあ出てくること、誤訳の数々。

単語と文法がたりないんじゃない?
そう思う人も(先生にも)いるかもしれない。
でも、単語も文法もきちんと頭に入っている生徒でも誤訳はかなり生じていたの。
これは、どういうことなんだろうね。
僕も結構驚いたんです。
だって、「知っているはずの英文を訳せていない」んだから。

なんでか、って考えたことあるかな。
ぼくには、自分なりの答えがひとつあります。
それは「英語を日本語にするときのルールに慣れすぎてしまっている」ということです。

 I played baseball with friends after school yesterday.
 「私は」「昨日」「放課後」「友達と」「野球を」「しました」

 I am now more interested in traditional Japanese culture than before.
 「私は」「今では」「以前より」「伝統的な日本文化に」「もっと興味がある」

日本語訳をカタマリごとに分解しているものです。
わかるかな。

英語を日本語にしようとすると、主語だけ訳したら、その後は、基本「後ろから」訳しているよね。
2番目の「昨日」は、1番後ろにある単語です。

いいんだけど。
訳すときには仕方ないんだけど、でもこれがたぶん、原因のひとつです。

だって、後ろから訳すということは、

 ①一旦左から一番右に行く
 ②その後右から左に戻りながら日本語に訳す
 ③んでもっかい右に行って次の文

と、いうことです。
同じ文を最低でも片道3回、しかも規則性のない適当な流れで読んでるということ。
「だから誤読が生まれる」んです。

当たり前と言えば当たり前。
だって英語を普段話してる人が、いったん文の終わりまで行って、そこから戻って解釈してるわけないもんね。
喋りながら、英文で言うと「左から右に」読みながら解釈してるはずです。行って戻ったりしない。
言葉は左から右に流れてるんです。

(こういう言い方だと「正しいけど中学生には早い」と言いたくなるかもしれないけど待ってね)

気付いた人いるかな。
前述していた「ぐるぐる読んでしまう」というのの小さいバージョンがこれです。
というより、これが癖になってしまっているから、文章全体でもその癖が抜けずに「ぐるぐる読まざるをえなくなる」わけです。
この方法しか知らないからなんだよね。
この行ったり来たりの読み方が身に付きすぎているために純粋な読みが出来なくなっている、だから誤読が生じる、と僕は考えています。


   ― ― ― ― ― ― ―


話のレベルを一旦すごく上げます。
もっと具体的に話すためです。
たぶん読めるけど、むずかしいのやだなと思ったら次の区切りまで飛んで大丈夫。


「長文になると英語読めなくなる」という人がいるよね。
(実は、おそらく先生もほとんどがそうです)
なぜ長文になると英語が読めなくなるのか。
その理由を僕はもう知っています。

どういうことか。
実は「その言葉自体が間違っている」んです。

正しくは、

「短い文も本当はちゃんと読めていないけど単語力と日本語力でなんとかなってる。けど長い文になるとそれらが通用しなくなるから読めないのが露呈(ろてい:前に出てくること)してしまう」

です。長いけどね。
難しくなく文型の話をするので、付いてきてください。

 I love you.

このI love youは文型のページでも軽く触れた、もっとも普通の文。
「SVO」という構造です。
(この用語を知らない人は、なんかの記号だと思ってくれて大丈夫。)

 ◎SVOの訳し方
 →SがOをVする

これが基本です。
(知らなかった人も、こういうものだと思ってね)

「I love you」は「SVO」でした。
だからその訳し方のルールに合わせて、「I(S)がyou(O)をlove(V)する」と訳すのが正解なわけです。
つまり「私」が「あなた」を「愛する」と訳すんです。

でも、普段こんなことしてないよね。
それを知らなくても訳せる。

「I」は「私」、「love」は「愛する」、「you」は「あなた」と知っているよね(=単語力)。
うまく繋げれば「私はあなたを愛する」と訳せるわけです(=日本語力)。

短い文ではこういうふうに、仕組みを知らなくても「単語力」と「日本語力(うまく繋げる力)」でなんとかなるということ。

でもこれで単語が難しくなったり(単語力が利かなくなる)、長くなったり(日本語力が利かなくなる)するともうだめになる。
だから、「長くなると読めなくなる」と言ってしまうわけです。

ちなみに、短い文だって読めないよ。

 I magic you.

こういう文があったとします。
え、「私」?「魔法」?「あなた」?
全部知ってるけど、繋げ役の「日本語力」が使えなくて訳せないでしょ。

でも上の解説がちゃんと理解できた人なら、この文だって「SVO」だと分かるかも。
「SVO」だとしたら、「SがOをVする」って訳せばいいんだったよね。

つまり「I」が「you」を「magic」する。
だから「私」が「あなた」に、うーん、「手品を見せる」とか「魔法をかける」とかかな?
くらいには訳せるわけです。
詳しいことは以降の文を読めば文脈で分かることもあります。

こういう仕組みが分からずに「単語力」「日本語力」で読んでいた、ということ。
しかもそのクセは、中学のときについた訳し方のクセだったんです。
高校生も、大学生もだいたいこうだよ。
長文の勉強のしかたで「とにかく単語だよ」とか「頻出文を覚えればいいよ」とかしかアドバイスできない人がだいたいそれです。

ただ、SVOとかは、高校生以上なら文型、構文を(「英文読解入門-基本はここだ-」などで)勉強すればなんとかなります。
でも、高校受験の中学生はそこまで勉強できない人の方が多いよね。

だけど、そのままにしておくと「ぐるぐる読み」で誤訳を起こしてしまう。
それをなんとか避けて、解決してくれるのが「左から右へ読む」という読み方なんです。


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改めてさっきの英文を載せてみます。

 I played baseball with friends after school yesterday.
 「私は」「昨日」「放課後」「友達と」「野球を」「しました」

分かっていてほしいのは、「英語が読める」ことと「きれいな日本語訳にする」ことは別の力だということ。

別の力、とはどういうだろう。
もう一度最初の英文を訳してみます。左から右に読んで。

 I played baseball with friends after school yesterday.
 「私は」「遊んだ」「野球を」「友達と」「放課後」「昨日」

こういうふうに読んだってとりあえず意味は分かる、よね。
正しい日本語じゃないからまったくわかりません!って思わないはずです。
じゃあ、これで意味が分かるんだから、わざわざ「きれいな日本語にする必要はない」よね、ということ。

「きれいな訳」にするときに必要なのは「日本語力」です。
すると、左から右に読んでも理解できる文に対して、余計な力と余計な時間を使うことになる。
それに、日本語力に頼りすぎると危ないというのはさっき話したよね。

きれいな日本語にこだわらず、左から右に読む、それができれば誤訳が避けやすいということです。
これなら完璧です、というわけじゃないよ?
「右から左に読んだり行ったり来たりしてるより」というのを忘れないでください。

左から右に読むと「friends after」とか読んじゃうかもよ?
なんていじわるなことを言う人もいるかもしれません。
でも、そんなの右から左に読んだって同じでしょ。

確かに始めに多少の慣れは必要だとは思います。
けど、左から、行ったり来たりしないで、素直に右に読む方が結局は正確に読めるようになるはずだ、ということ。
実際、この方法を数人の生徒(得意な人から結構苦手な人まで)に指導しましたが、結構すぐに慣れて使えていました。
だから決して、難しすぎる方法ではないと思うよ。
さっき過去問の解き直しが上がったって書いたけど、その理由のひとつはこの方法をしてみたことでもあると考えています。

「I love you」のような普通に訳せる文をわざわざ左から右に訳す必要はないです。
長い英文で、なんだこれ、と思ったときに誤読は最も生じやすい。
だから「困ったときほど」左から右に訳してみよう、と書いてあったんでした。

もうひとつの例も。

 I am now more interested in traditional Japanese culture than before.
 「私は」「今では」「以前より」「伝統的な日本文化に」「もっと興味がある」

→I am now more interested in traditional Japanese culture than before.
 「私は」「今」「もっと興味がある」「伝統的な日本文化に」「以前より」

この程度の日本語で、先に読み進めて全然構わないわけです。
だって、わかってるんだもんいいじゃん。
きれいな日本語にして読み進めなさいとは誰にも言われてない。時間も労力もかかる。

何度も同じことを言ってるよね。
それだけ「伝わりづらい」と思ってるのと、それだけ「使えてかつ必要だ」と感じているからです。ぜひ。


◎前置詞(at, on, in, with, after, forなど)について

前置詞は後ろに名詞をとってカタマリをつくる、と覚えててください。
そうすれば、

 I played baseball with friends after school yesterday.

この文でのカタマリは「with friends(前+名)」「after school(前+名)」だと分かるよね。
「baseball with 野球と一緒に」「friends after 友達の後で」などと訳し間違える心配がなくなります。
めちゃ大切だよ。

前置詞は?
(「後ろに名詞をとってカタマリをつくる」って言えるようにね)


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■後は毎日長文に触れる

色々書いたけど、最初に述べた「英語が一番伸びにくい」というのも確かだとは思います。
だからといって暗記以外何もすることがないというのは違う。
そういう話たちでした。

ただ受験前に、単語と文法を覚えて、英作文もある程度書けて、長文も上のアプローチに慣れてきたら、やることがあまりないといえばありません。
だからその分、理科数学社会国語に時間をかけてほしい。

ただ、英語長文には毎日触れること。

長文を読むのが今苦手な人が、上のやり方を身に付けたからといって急に早く読めるようにはなりません。
慣れる、ということが必要なんです。

今長文が苦手な人は、長文中の

 ①難しい文を時間をかけて読む
 ②普通レベルの文も時間をかけて読む

という状態です。
左から右とかに慣れてないから、普通のレベルの文にも無駄に時間を使ってる。

でも、普通の文は普通に読んで、難しい文でちょっと立ち止まればいいはずだよね。
目標は、ゆっくりとした音読のペースです。
音読は前に戻れないから、左から右の練習にも最適です。
それ以上早く読む必要はないはず。

 ①基本、音読のペースで読む
 ②難しい文はちょっと立ち止まる(でも考えすぎて時間オーバーにならないように)

これでいいはず。

最初は音読のペースが難しくても、同じ長文を3回復習すれば、その長文に対してはたぶんできるようになるはずです。
まずはそれをくり返す。
他の長文(最初はなるべく簡単なのがいいです)も、くり返して、音読のペースで読めるようにする。
そうすれば新しい長文にも必ずいい影響が出るはずです。

オススメのテキストもあります。
普通テキストって、ここがあればなとか、この構成がなとか、先生目線だと気になるもの。
だけどこのテキストは初めてまるごと素晴らしいって思えた。

 くもんの中学英文読解
 https://www.amazon.co.jp/dp/477432048X

やさしくて、短くて、文法別で載っています。
中学生やすごく苦手な高校生以上には本当にオススメ。
単語と文法はだいたい分かってるけど長文が苦手な人。
このくらい初歩から初めても、1ヶ月本気になればたぶん間に合います。

慣れが必要だということは、すぐに身につかないということです。
だから、1日たっくさんやって他の日やらないじゃ慣れないよね。
短い時間でもいいから、毎日1つは長文を読む。音読する。
上に書いたポイントを忘れずにね。
必ず、今よりできるようになるはずだよ。


 勉強できようサイトもくじ




by dekiyosite | 2019-05-23 23:22 | 英語